11月最終週の為替市場は、久しぶりに「U.S. dollar strength(ドル高優位)」が崩れた一週間になりました。米金融政策の転換期待が一気に織り込まれ、ドルインデックスは7月以来最大の週間下落ペースに直面しています。次回12月10日のFOMCでの25bp利下げ織り込みは8割超まで上昇し、米金利低下とともに主要通貨が対ドルでじわりと反発しました。
一方で、アジア時間の主役は相変わらず日本円。USD/JPYは156円台までじりじりと円安が進み、財務省による為替介入への警戒感が再びマーケットの会話に上がっています。
いま何が起きているのか
今日の東京市場でも、ドル円は156円台前半からミドルを挟んで神経質な値動きが続きました。背景にあるのは、米利下げ観測によるドル全体の調整と、「それでも弱い円」という二面性です。
東京CPIが前年比+2.8%と、日銀の物価目標を上回る伸びを続けていることで、来年以降の追加利上げ期待は完全には消えていません。しかし、現在のところ日銀は慎重なスタンスを崩しておらず、金利差の縮小ペースは依然として緩やかです。
市場では「158〜162円ゾーンは介入ライン」という見方が根強く、156円台は“その手前の助走区間”という意識があるのか、上値を試しては投機筋の利食い売りと介入思惑のショートがぶつかり合う展開です。
ヘッドラインの裏側
ヘッドラインだけを見ると、「ドル安・円高への転換点」と読めますが、チャートとフローを眺めていると、もう少し複雑な構図が見えてきます。
- ドルインデックスは下落している
- しかし USD/JPY は依然として156前後と歴史的な円安圏
- V-LabのGARCHモデルではUSD/JPYの1週間ボラティリティは7%台と、平常よりやや高めの水準で推移
という状況で、これは「ドル全面安」よりもむしろ「クロス円が買い戻され、ドル円だけが介入リスクで上値を抑えられている」構図に近いように感じています。
この20年以上、円キャリーの巻き戻しや介入局面を何度も見てきましたが、本当にトレンドが反転する局面では、ヘッドラインより先にボラティリティが跳ね上がり、その後に実弾介入や政策変更が追いかけてくることが多い。今の市場はまだ「介入を怖がりながら円売りを続けている」中間段階に見えます。

トレード上の示唆
個人的にここ数日、意識しているポイントは3つです。
- 155円台前半〜半ばのサポートゾーン
最近の値動きを見ると、短期筋は155円台前半を「押し目買いゾーン」として見ているようで、このあたりからの反発が何度も確認されています。 - 158円〜160円の“介入リスク帯”
ここはレジスタンスであると同時に、「いつヘッドラインが飛び出してもおかしくない」ゾーン。レバレッジをかけた順張りロングには不向きで、オプションでtail riskを抑えた戦略が合理的だと感じます。 - U.S. dollar strength の“質”の変化
これまでは「米金利上昇=ドル高」という素直な図式でしたが、足元では“米利下げ期待の中でもドル高がどこまで維持できるか”という、より複雑な環境に入っています。ユーロやポンドの底堅さを見ると、ドル高一辺倒のポジション構成は明らかに賞味期限切れです。
今後のシナリオ
この先1〜2週間の焦点は、
- 12月FOMCに向けた米指標(雇用・インフレ)
- 日本の当局による口先介入のトーン
- 年末に向けたポジション調整
の3点に集約されるでしょう。
個人的なメインシナリオは、「ドル円は年内150〜158のレンジで高止まりしつつ、要所要所で介入警戒のショートカバーを挟む」というものです。真のトレンド転換は、日銀が金利をもう一段引き上げ、マーケットが“円を売っても旨味がない”と判断したタイミングまで待たされる可能性が高い。
それまでは、USD/JPY を“トレンドフォロー”するというよりも、“ボラティリティを売買するプロダクト”として見る方が現実的です。レンジの端を追いかけるのではなく、イベント前後のcrypto volatility ならぬ “FX volatility” をどう収益化するか——ここに、年末相場の妙味があると感じています。
