今日の為替市場は、一見すると落ち着いた値動きに見える。しかし、実際には主要通貨の間で資金の再配分が静かに進んでいる。ユーロは対ドルで上値の重さが目立ち、円も戻り局面では売りに押されやすい状況が続いている。市場全体は、次の金融政策イベントを前に、慎重ながらも明確な方向性を探っている段階だ。
直近で起きたこと
直近では、米国の経済指標が相次いで発表されたが、いずれも極端なサプライズはなかった。それでも米ドル指数は底堅く推移し、主要通貨に対して再び優位性を示している。この点については、米金利の高止まりと相対的な経済耐久力が背景にあると見る向きが多い。
私自身も、こうした見方には一定の合理性があると感じている。実際、ロイターが指摘しているように、市場は「利下げ時期そのもの」よりも「他国との景気格差」に注目し始めている

行間を読む
表面的には「利下げ観測の後退」が語られているが、本質はそれだけではない。重要なのは、ユーロ圏やアジア主要国の景気指標が、想定以上に弱含んでいる点だ。
20年以上為替市場を見てきた経験から言えば、ドル高局面の多くは「米国が強い」というより、「他が相対的に弱い」ことで形成されてきた。今回もその構図が再び当てはまりつつあるように思える。
実務的な示唆
短期的には、ドル円では心理的節目となる水準が意識されやすく、ユーロドルでは戻り売りが入りやすい地合いが続く可能性がある。ボラティリティが抑制されている今の環境では、無理にトレンドを追いかけるより、節目を意識した戦略が有効だと考えている。
今後の視点
今後は、米国債利回りの動きとFRB関係者の発言が焦点となる。もし長期金利が再び上向くようであれば、ドルの評価はもう一段見直される可能性がある。為替は常に相対評価の世界だ。その原則を忘れずに市場を見ていきたい。
