金市場は、史上最高値を更新した後、明確な方向感を欠いた展開が続いている。ドル高や実質金利の下げ渋りといった要因が重なり、短期的には調整圧力が意識されやすい環境だ。一方で、急落を示唆するようなパニック的な動きは見られていない。

直近の動向

足元では、金価格が重要なサポート水準を試す展開となり、一部の短期筋による利益確定売りも確認された。ただし、中央銀行や長期投資家による需要は依然として底堅い。

ブルームバーグも、最近の記事で「金市場は過熱後の健全な調整段階にある」と指摘している

見落とされがちな視点

多くの解説では「金利が下がらないから金は上がらない」と単純化されがちだ。しかし、私の経験上、金が本格的に買われるのは“リスクが完全に織り込まれていない局面”だ。

2015年の金融市場の混乱や、2020年の不確実性拡大局面でも、金は一度調整を挟んだ後に再評価された。現在の市場も、地政学リスクや財政問題を理解しているつもりになっているが、完全に消化できているとは言い切れない。

投資家への示唆

短期的には、金価格には明確なレジスタンスが存在する一方、下値では実需買いが意識されやすい。こうした環境では、ブレイクアウトを追うよりも、調整局面での段階的なエントリーが現実的だと考えている。

今後のシナリオ

今後の焦点は、米国の実質金利、ドルの方向性、そして地政学リスクの再燃だ。これらが同時に意識され始めたとき、金市場は再び明確なトレンドを描く可能性がある。

金は沈黙しているように見えて、常に次の動きを準備している。その感覚は、長年この市場を見てきたからこそ強く感じる。