今週の貴金属市場は、地政学リスクと米国マクロ指標が複雑に絡み合う緊張した展開が続いている。中東情勢の不透明感が再び強まり、同時に米国のインフレ指標が市場予想を下回ったことで、ドル売りと安全資産買いが同時に進行した。

私は長年、金市場のボラティリティと投資家心理の変化を追い続けてきたが、こうした「地政学×金融政策」の組み合わせは、しばしば強いトレンドを生む。

何が起きたのか

ニューヨーク時間に入ると、金価格は一気に買いが加速し、1オンスあたりの価格は重要なレジスタンスである2,040ドル近辺まで上昇した。中東での軍事的緊張の報道がヘッドラインを占めると、アルゴリズム取引とファンドの買いが連鎖的に入り、短時間で10ドル以上の急騰となった。

同時に米ドル指数は軟化し、米国債利回りも低下したことで、金にとっての追い風がそろった形だ。

行間を読む

表面的には「地政学リスクで金が買われた」と説明されるが、私の目にはそれ以上のものが映っている。ここ数週間、実需筋や中央銀行系の買いが水面下で続いており、今回の上昇はその蓄積が一気に噴き出したように見える。

私は2010年代の欧州債務危機の際にも、同じような“静かな買いの蓄積”が大きなブレイクアウトにつながる場面を何度も見てきた。

トレーディングの示唆

短期的には2,040~2,050ドルのゾーンが強いレジスタンスとして意識される。ただ、この水準を明確に上抜ければ、テクニカル的にも新たな上昇トレンドに入る可能性がある。ドルの弱さと米金利の低下が続く限り、押し目は買い場として機能しやすい。

今後の見通し

今後発表される米国の雇用統計やFRB関係者の発言が、次の方向性を決める鍵となるだろう。中東情勢がさらに悪化すれば、金は安全資産として再び注目を集め、史上高値圏を試す動きも現実味を帯びてくる。