年明けからの貴金属市場は、典型的な「リスク回避の買い」と「米ドル高の逆風」が交差する、読みづらい地合いが続いています。足元では金価格が史上最高値を更新した一方で、上値追いは一気に加速するというより、“高値圏での押し目と戻り”を繰り返しながら進んでいる印象です。

何が起きたか

昨日から今日にかけての注目点は、金が史上最高値(4,640ドル台)をつけたあと、やや反落して落ち着いたことです。背景はシンプルで、米国の経済指標が底堅くドルが強含んだこと、そして地政学リスクがいったん緩んだことが“利確の口実”になりました。
ただし、週足ベースでは依然として上昇基調で、短期の調整は「トレンドを壊す崩れ」というより、“上昇の途中の揺り戻し”に見えます。

見落とされがちな点

ここで見落としがちなのは、金の上げが「パニック買い一発」ではなく、複数の需要が同時に重なっていることです。
米ドル高は確かに金の上値を抑えますが、それでも高値圏で底堅いのは、ヘッジ需要・中央銀行需要・資産分散ニーズが継続しているサインでもあります。たとえば、金ETF(SPDR)保有量が増加したという観測も、地味ですが支えになります。
私がこの市場を20年近く見てきて痛感するのは、金は「上がる理由」が1つだけの時ほど脆く、理由が複数ある時ほど粘る、ということです。金利・ドル・地政学という“綱引き”の中で、金が高値圏で踏ん張っているのは、それだけ買い方の層が厚い証拠です。

取引の示唆

実務的には、いまの金は「上昇トレンド継続を前提にしつつ、追いかけ買いを急がない」のがバランス良い戦い方に見えます。

  • 抵抗帯(gold resistance level):史上最高値近辺は当然ながら売りも出やすい
  • 押し目の質:反落が浅く、すぐ買い戻されるなら強い地合い
  • ドルの強さ(U.S. dollar strength):ドルが上がっても金が崩れないなら、買いの圧力が勝っている

UBSが金の先行きに強気見通しを示している点も、マーケット心理の“支え”として無視できません。

今後の展望

短期では「高値圏の調整→押し目買い→再トライ」という往復運動になりやすいでしょう。私は、金がいったんスピード調整したあと、再び高値を試すかどうかは、米国の利下げ期待が戻るか、そして地政学ニュースが再燃するかが鍵だと見ています。
金は“毎日一直線に上がる商品”ではありません。ただ、上昇の根っこが複数ある限り、押し目は簡単に崩れにくい——そんな相場観で、次の波を待ちたいところです。