今朝のFX市場は、まるで全員が同時に話している部屋のようだ。金利、政治、ハイテク株、インフレ指標——あらゆる材料がマイクを奪い合っている。米ドルはアジア時間に入って落ち着きを取り戻し、ECBと英中銀(BoE)の連続イベントを前に、EUR/USDは1.18ドル近辺USD/JPYは156.9前後で推移している。

背景

見た目は穏やかだ。ECBもBoEも「据え置き」がコンセンサス。それでも市場の構えは決してリラックスしていない。ECBの決定は本日中に控え、ほどなく記者会見が始まる。タイミングが微妙なのは、ユーロ圏のインフレが1.7%まで鈍化する一方で、ユーロ高が輸入コストを押し下げ、インフレ沈静化を“勝手に”進めてしまう可能性があるからだ。

為替を20年見てきて痛感するのは、「紙の上では何も変わらない日」こそが最も危険で、かつ最も重要になり得ることだ。ガイダンス、トーン、あるいは形容詞ひとつで、カーブ全体が一気に値付けし直される。

何が起きたのか

イベントを前に、ドルはじり高で窓に入った。ドル指数は約0.2%高の96.671EUR/USDは1.1800近辺GBP/USDは1.3650近辺USD/JPYは156.92前後で、2月8日(日)の投票を控えた日本の選挙戦が最終盤に入る中、円は落ち着かない動きになっている。

私がスポットレート以上に重視しているのは、次の2点だ。

  • リスクムードが防御的になっている
    米株が“リスクオフ”の値動きになり、ナスダックは直近2セッションで大きく下落した。大型テックの決算を巡る物語(特に設備投資と生成AI移行のコスト感)が背景にある。こういうテープは、マクロが複雑でもドルに買いが入りやすい。
  • FRBの議論が粘着質(=簡単に後退しない)
    FRB理事リサ・クックは、雇用の弱さよりも「インフレ鈍化の進捗が止まりつつある」ことへの懸念を示した。先物市場でも次回会合は据え置きが濃厚に織り込まれており、米金利が“ドルの明確な逆風”になりにくい。

行間を読む

ヘッドラインが薄めがちな緊張はここだ。欧州のインフレが落ち着くのと同時に、ユーロが強い。 この組み合わせは、時に自己強化的になり得る。報道では、1月のインフレが1.7%(2024年9月以来の低水準)に低下し、コアも2.2%に鈍化。市場では、ECBが2026年を通じて政策金利を据え置くとの見方が根強い。

英フィナンシャル・タイムズは、今回のインフレ低下がエネルギーコストの下落ユーロ高に起因し、サービスインフレも緩んできた点に言及。市場は9月利下げの可能性を限定的にしか織り込んでいない、といった温度感だ。

そしてECBの難しさは“メッセージ”にある。別の報道では、ECBの現状を「ゴルディロックス(ほどよい)な局面——政策は良い場所にある」と表現しつつも、地政学、コモディティの変動、ドルの振れなど環境次第で計算が崩れる可能性を指摘した。ECBはおそらく「為替目標はない」と繰り返しながらも、ユーロ高がインフレ見通しに影響する要因の一つであることは認めざるを得ない。

日本側では、円が「政治資産」のように振る舞っている。報道では、選挙リスクを織り込みつつ、弱い通貨を是認するように受け取られかねない発言への敏感さもあり、USD/JPYは上昇しやすい地合いになっている。

トレード上の要点(助言ではなく、私のメモ)

  • ここは“金利決定”ではなく“会見市場”
    据え置きが本線なら、勝負はニュアンスだ。不確実性を強調するのか、緩和バイアスをにじませるのか、利下げ観測を牽制するのか——その微差で相場は動く。
  • EUR/USDは「欧州」より「ドル」への国民投票のように動いている
    最近のユーロドルは、金利差よりも“グリーンバックのセンチメント”でほぼ決まっている、という指摘もある。景気後半の為替でよくある現象で、物語が支配し、ある日突然それが崩れる。
  • ストレスゲージとしてEUR/JPYを注視
    ユーロが底堅く、円が政治要因で重い局面では、EUR/JPYが「欧州の安定 vs 日本の不確実性」を最も素直に表しやすい。加速すればキャリー志向の強さ、つまずけばリスクオフ拡散の警告になり得る。
  • カレンダーの歪みを無視しない
    米雇用統計は、直近の政府機能停止に絡む遅延でタイミングが乱れている。市場が“信頼できるマクロの錨”を失うと、二次的な指標や発言で為替が過剰反応しやすい。

今後の見通し

基本シナリオは、よくある形だ。レンジ相場だが、イベントで端が鋭い。

  • ECBが「政策は良い場所」「ユーロ高は問題ない」といった“安心感”をにじませれば、EUR/USDは支えられやすい。物語を壊す触媒がないからだ。
  • 逆に、ECBがインフレの下振れ(特に強い通貨がインフレを押し下げる点)に少しでも神経質なら、市場は「ECB緩和バイアス」の脚本を引っ張り出してくる。報道で引用されたバンク・オブ・アメリカの見方では、不確実性が強調され、ここから緩和方向に傾きやすい(時期の確信は別として)という。
  • そして日本。日曜(2/8)の投票が大きい。週末に向けて円が弱いままだと、流動性が薄い時間帯に政治ヘッドラインが重なり、脆さが増す。こういう局面で通貨は選挙結果を“お行儀よく待つ”ことは少ない。先に動き、後から理由を探す——何度も見てきた展開だ。